大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)346号 決定

よつて記録につき調査するに、本件仮処分申請の理由は、抗告人は電気機械器具の製造販売を業とする相手方会社柳町工場の従業員であつて、同工場従業員の大多数を以て組織する全日本金属労働組合神奈川支部東芝柳町分会(以下東芝柳町分会と略称する)の組合員にして組合専従者であるが、相手方は昭和二十五年十月二十六日抗告人に対し、何等正当の理由なきに拘らず、同月三十一日附を以て解雇する旨を通告し、以後抗告人の工場立入を拒否するに至つた。然しながら右解雇は憲法並に労働法令に違反し不当労働行為を構成するのみでなく、現に労使間に行われる慣行並に信義則にも背く無効のものであるから、抗告人は解雇無効賃金支払請求の本訴を提起すべく準備中のところ、本訴の確定を待つにおいては生活を維持することが困難となる恐れがあるので、早急に抗告人の従業員たる地位を仮に定め、且つ従来相手方から得ていた賃金七千三百四十五円(解雇当時の理論月収)を相手方をして定時に支払わしめる旨の仮分決定を求めるというのである。

然しながら抗告人は本件解雇当時東芝柳町分会の組合員にして組合専従者であつたのであるから、組合役員として組合より報酬若しくは手当の支払を受けていたことはあつても、相手方会社より現実に提供する労務の対価たる賃金を支給されておつた筈なく、抗告人の主張する解雇時における「理論月収」金七千三百四十五円というのは、若し抗告人が組合事務に専従せずして相手方会社の労務に服していたと仮定すれば、本俸並に手当等を合せてそれ丈けの収入が得られたであろうという推算額にすぎぬものと認められる。事実相手方が従来労働組合法第七条第三号に掲げる不当労働行為の禁止規定に違反し、組合専従者たる抗告人に対し陰に給料を支払い、以て労働組合運営の経費支弁につき経理上の援助を与えていたようなことはこれを窺い得られないのみならず、記録上抗告人は解雇後原審における仮処分審理当時まで引続き右専従者の地位に止つていたことが明らかであり、その後これを離任したことの主張並に疎明がないので、抗告人は現在もなお専従者として組合よりその地位に伴う報酬手当を受けて生活しておるものと認むべく、しかして組合専従者たる限り仮に解雇が無効であるとしても相手方に対し賃金並に手当等の支払を請求しうる何等の権利を有せざることは論を俟たないところである。それ故抗告人が解雇が無効であるならば当然相手方に対し従業員として給料の請求を為しうるものとの前提に立ち、現にその支払を得られぬ為め生活を維持することが困難に陷るのを防止する必要が存することを理由とする本件仮処分の申請は、解雇の当否は別とするも少くも仮処分の要件たる保全の必要性を欠くことが明かであるから、この点において右申請は許すべきでなく、原審が同一判断の下にその旨を説示して抗告人の申請を却下したものは相当であつて、右に反する抗告論旨は凡て採るに足りない。

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